植込み型降圧ディバイス

Catheter-based renal denervation in patients with uncontrolled hypertension in the absence of antihypertensive medications (SPYRAL HTN-OFF MED): a randomised, sham-controlled, proof-of-concept trial ランセット 11月11日 降圧剤の内服のない高血圧患者を80人あつめて40人には腎動脈における交感神経遮断をカテーテルアブレーションで行い、40人にはカテーテル治療をした振りをして腎動脈造影検査のみを行ったようです。統計的に有意にアブレーションが良かったようですが、試行群は10mmHg下がったのはすごいですが、騙し群でも5mmHぐらい下がっていました。騙し群の人たちに、あとで本当はこうだったと、倫理的には報告するのでしょうがその後どうなったのでしょうか。薬にはプラセボ効果があります。いわゆる偽薬効果です。信頼のできる先生から角砂糖を処方してもらっても、血圧は少し下がります。ノセボ効果はこの薬は絶対吐き気の副作用ありますというと本当に吐きっぽくなります。ホーソン効果は実際の手技における偽薬効果的なものです。有名な施術者によるマッサージのあとで ’ほら、こんなに曲がった背骨がまっすぐになった’とか’小顔になった’と心理的視覚的に満足させる方法です。実際に効果もあるのでしょうが、医学的事実より過大に効果が出る現象です。 しかし この下の論文は違います。男前のデバイスです。

Endovascular baroreflex amplification for resistant hypertension: a safety and proof-of-principle clinical study. ランセット2017年9月1日

3剤以上の高血圧でも180/100mmHg越えの人たち30人集めて、降圧剤はそのまま継続前提ですが、頸動脈刺激装置を用いて降圧効果を実験したのです。頸動脈が内頚動脈(脳80%以上還流)外頸動脈(顔、頭の骨などの血流)の分かれ目に頸動脈洞があります。頸動脈洞は脈拍を遅くする(迷走神経中枢)循環器センサーや酸素濃度を検知する呼吸センサーです。そこに血液をサラサラにして、カテーテル検査室で、太ももの動脈からガイドして、6mm程度のハリガネ細工のステントや下大静脈フィルター的なものを留置します。頸動脈近くにデバイスを別個に入れて、そこから頸動脈に指令を送って、頸動脈洞反射を利用して血圧を下げようということでしょう。詳しいデバイスのプロトコールはよくわかりません。心拍をセンスして頸動脈に電気刺激を送るのだと思いますが。30mmHgすぐに下がるようです。降圧剤を減量する人も出てきました。大変効果はあったようですが、4人が脳梗塞などの塞栓症になったようです、頸動脈からごみがとんだか、カテーテル手技にまつわるものでしょう。一人歩行障害あったようですが、そのほかは大丈夫のようです。死亡がでたら論文にはなりにくいでしょう。ドイツとオランダはこういう実験研究が大好きです。

問題は、患者さんはBMI28平均で肥満体が多く、機械を入れる前にダイエットをすれば血圧は20mmHgぐらい下がったでしょうが、そういう盛下がることは言ってはいけないのでしょう。また頸動脈内に異物をいれて血栓ができるのは必至でその後、このデバイスを取り外す時に目も当てられない事故が起きそうです。素人考えですが、頸動脈分岐部だけの露出なら皮膚切開3cmあればできるので、外科的に外側から 刺激のできる輪っかをのんびり固定して、デバイスもそのまま留置したら、血栓塞栓症の恐れもなくていいでしょう。具合悪ければポコッと外せばいいのです。心臓血管外科の仕事が増えて喜ばしいと、出身者としてはこのように思いますが。ペースメーカーも昔は心臓外科が入れていましたが、今は内科の電気生理のスペシャリストたちが、上手に安全に入れていますから。