アルツハイマーの薬

Donepezil and Memantine for Moderate-to Severe Alzheimer’s Disease

ニューイングランド 2012年3月8日

イギリスの大学群の研究です。在宅295名です。認知症についてですが、アルツハイマー型認知症についてです。国際的に有名な論文です。

アルツハイマー病は認知症の80%を占める疾患です。2010年段階で西側諸国において1700万人、アメリカ500万人、日本はでも400万人以上いるといわれています。アミロイドβと言われる老人斑と神経原線維変化タウが海馬などの認知機能担当の大脳辺縁系に蓄積するという老化のゴミが蓄積する病気です。高齢化社会到来でなったのか、糖尿病では半数以上が脳萎縮傾向とのことでこれが増えたのか。持論ですが、血圧下げすぎたのか塩分控えめがいけないのか、よくわかりません。診断は確定的なものはなく、家族の訴えが一番大切です。長谷川式スケールはMini-Mental State Examinationの日本版です。数回自宅で練習したら点数の良くなる知能テストみたいなものです。その他は複雑すぎて、医者が自ずからしても、自信がなくなるようなテストがたくさんたくさんあります。MRIで萎縮を推察することはできますが、決定的な脳萎縮のあった際は、やっぱりあったねというだけで、本人を除き家族が落胆することになります。薬物治療は日本人開発のドネペジル有名でコリンエステラーゼ阻害剤です。脳内の伝達を活発にする効果があります。たくさん処方しましたが、全く飲んでいない人よりも臨床的にあると思います。たとえば本好きのお年寄りでアルツハイマー疑いの方がいたとして10年処方していまだに、推理小説を繰り返して(10冊を何度もですが)読める人が数名います。メマンチンはグルタミン受容体を阻害する薬です。グルタミン酸は味の素と関係あるか知りませんが、大麻などは作動薬のようですし、少しうっとりさせるのでしょうか。これをブロックするのがメマンチンです。ドネペジルが少し易怒ということで同系薬剤が出現し、別系統薬剤としてグルタミン酸受容体アンタゴニストが出たというわけです。研究は295人の外来中等度以上の認知症患者を、ドネペジル+メマンチン、ドネペジル+偽薬、偽薬+メマンチン、偽薬+偽薬という4チームにわけた研究です。Intention to treatという方法で、薬の副作用などで中止があっても最終的には結果に加えるという方法で、少ない症例数で薬の効果判定が可能になる方法だそうです。結果は12週においてはドネペジル継続さらにはメマンチン併用の方が認知機能改善としていました。しかし全4チームとも4年で直前のことをほぼ忘れるレベルまで低下していました。偽薬+偽薬にチームは、4チームの中で最低のテスト結果になっていましたが少しの差でした。また薬の途中棄権は当然ながら副作用の全くない、偽薬+偽薬チームで少なかったようです。決定的に認知症を予防、進行予防する薬は残念ながらないようです。