ニコチン依存と脳神経

Nicotine Addiction

ニコチン依存症についての解説、ニューイングランド2010 6/17

5人に一人がタバコが死因の病気でなくなるようです。タバコの害で亡くなる人の半数がもうちょっと長生きできたようです。完全な禁煙成功者は年間3%しかいない現実があります。これはニコチン依存が原因です。タールの苦み、たばこの葉を燃やす芳香が癖になる人もいるでしょうが、確実にニコチンを入れたい欲求がタバコ断ちできない大きな原因です。この総説をもとに、作文します。

Ventral tegmental area 腹側被蓋野(中脳、ドパミン受容体もグルタミン受容体もそしてα4β2のニコチン受容体ありnicotinic cholinergic receptor)

nucleus accumbens側坐核(前脳、快楽と嘘つきの中枢)

ニコチン刺激は中脳という脳幹に作用して、快楽物質ドパミンを放出して中脳大脳辺縁系(それこそ扁桃体)あるいは大脳基底核(前脳 側坐核)と連絡して快楽を得るというメカニズムは有名です。ドパミンに拮抗するのがGABA(睡眠剤のメカニズム、アルコール酩酊のメカニズム)。これも同時に放出され拮抗しようという防御反応かもしれません。タバコを吸うと目が覚めるのはドパミン放出によるもので、頭が冴える気がするわけです。眠くなるとタバコを吸う、徹夜作業でタバコを吸うコーヒーを飲むのは覚醒を期待するわけです。グルタミンはドパミン放出を促しますので、食後グルタミン効果による脳の満足(眠くもなる)とともに、より一層快楽が欲しくなって、食後の一服がたまらなくおいしくなります。

 喫煙者の中脳でのニコチン受容体の満足度で喫煙本数がきまるようです。少ない本数で満足できるかは受容体の数に規定されます。ただし日中はその受容体を常に満足させるために、枯渇症状として定期的にタバコに火をつけるなり、水蒸気タバコを作動させるわけです。満タンに受容体を埋めておかないと、枯渇がひどくなります。寝ている最中は、受容体はニコチンと切り離されて、空っぽになりますから、起き抜けの一服がたまらなくおいしいわけです。

 ニコチンで血管収縮→狭心症、下肢の虚血などが強ければ、猛毒として取り締まられるでしょうが、さほど出ないため、看過されています。脳だけでなく末梢神経にも作用します。ドキドキして闘いの交感神経もウットリ安心食欲旺盛の副交感神経も、中枢から臓器の間に一回神経路を乗り換えます、その乗り換えの指令物質はニコチン受容体となります。タバコを初めて吸うと、くらくらするのは全自律神経が一挙にオンされて、体が面食らうからです。臭く苦い味とともに、自律神経の変化に慣れてくると、先の脳みその快楽を追い求めるために、ニコチンを得るために、たばこを発火させたり水蒸気のスイッチ押したりする依存行動がおこります。

何度も言ってますが、

ランセット 2007 1047~ に薬物依存の相対評価があります。有名です。

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ニコチン依存からの離脱は、そんなに簡単な道のりではありません。