クリーブランドの老人医療特集 | 医療法人社団 こうち医院

クリーブランドの老人医療特集

Geriatrics update:2015, vaccination, frailty, chronic disease guidelines, and cognition.

クリーブランドクリニック雑誌2015年8月号

世界の名病院ランキングでトップ10に入る病院の院内雑誌でコンパクトに臨床のポイントを網羅しています。NEJMの難しい総説を読むより、忙しい臨床医向けのよい雑誌です。最近この存在に気づきました。今のところ無料のようでお得です。文章も完結でフランクな口語調の文章です。

老人内科これだけ特集;

〇老人のインフルエンザワクチンは4倍高容量がよいが、高くて保険で認められていなくて、もともとワクチン効果が低いので、200人に一人その恩恵があるに過ぎない。NNT200人 numbers needed to treat

〇肺炎球菌ワクチンは23価のポリサッカライドワクチンが有名だが、ジフテリア混合13価ワクチンも老人で接種できるようになった。23価肺炎球菌ワクチンが普及していない地域のオランダで13価をうって50-70%肺炎予防という論文だけをよりどころに、アメリカもこれを追加接種することに決めたが、23価接種から1年たって13価を追加、23価打ってないものは13価先に打って半年あけてから23価。(注日本では先に西田敏行23価ありきでその後半年から4年あけてという微妙なかんじで加山雄三13価と日蘭折衷の推奨)原価は日本より2割高めだがメディケアパートBで保険適応1回あり(公的医療保険で、医療保険のほかパートAは介護、パートBは予防検診など、後日勉強します、印象は結構きめ細かく、がん検診から予防接種まで廉価でカバーしていましたよ)

〇老人の心不全には

  1. 抗アルドステロン剤のエプレレノンを使用せよ。②75歳以上で塩分制限すると良くないぞ。③カリウムやアルブミンや血中濃度をはからずジギタリス使用すんなよ。

〇老人の悪玉コレステロールと血圧

75歳以上でリスクのない高悪玉に極端なスタチン治療はいらない、糖尿病や高血圧など合併していたらちゃんと処方せよ。リスクのない高齢者の血圧は150/90以上で治療を考え140mmHg以下を目安にするのがよい(同感)。血圧下げ過ぎよくないが、高すぎるといつか心不全になりますぜ(同感)。

〇アメリカの老人は42%筋肉が弱ってフレイル状態11%は重症。骨折予防は運動療法であるが、20人運動頑張ってようやく一人骨折予防につながるというデータもある。頑張るしかない。NNT20人

最近よくNNT (Numbers needed to treat)という概念で説明します。【20人運動頑張ってようやく一人骨折予防につながる】 

X人に何かをしたら一人こうなるという、わかりやすさを売りにした表現です。NNTという用語で疫学やエビデンス医学でよく使われます。NNTの値でアメリカの医療保険は治療を制限することもあるようです。これ一錠で病気が治るくすりは、NNTは一人。二人が内服して一人助かればNNT2人、NNT10人になるとプラセボ効果に分類されます。一回何十万円の抗がん剤などはNNT20人のものもあるでしょう。ある治療をしたら死亡リスクが5%減るということは、NNT20人になりますが、合併症が10%あったら10人に一人は副作用に泣くことになります。実際の医療ではNNTにこだわらず患者の求めや意思で治療を行います。20人治療して1人予防できる、100人治療してようやく一人命が救われる、100人治療して1人予防できる。命と予防と数字と倫理と医療経済と私の経済が入り混じることになる数字を見つけてしまいました。