新型コロナと大正時代のスペイン風邪

 先ほど、ニューイングランド誌を読むと、スペイン風邪の当時の死亡率が2%、それより新型肺炎は1%で低いとしていました。飛行機や豪華客船がなく人々の交流のない時代で、医療も発達していない大正時代とほぼかわらない死亡率を、提示しています。中国と韓国と日本の死者数が分子になって分母が患者総数でしょうから、大変なことです。腹部大動脈の定期手術の死亡率は限りなくゼロです、心臓バイパス手術でも2%以上では、なかなか手術患者さんは集まりません。胃がんの手術の最中や直後に死亡することはもはや事故レベルでしょう。風邪で1%の死亡は恐ろしい。エボラは、注射器や歯ブラシや食器類の使いまわしの過疎未開地域で、医者より祈祷師が多い地域の限定疾患で、エボラより死亡率はましというような、楽観はよくない。このまま、新型肺炎で国家間の往来の規制がすすめば、飛行機や船舶の動きまで、大正時代並に戻るかもしれません。

 現在東京は毎日5名前後の新規患者を発表していますが、何人検査して何人陽性かは公報していますでしょうか。一日何件やっているかは、申し上げると問題になるのでいえませんが。陽性者は何十回の検査で一人ぐらいのものです。検査で、陽性者を洗い出して、病院を探して、入院させるのでは遅いと思います。熱咳→則安静、数日待ってPCR、陽性なら指定病院に念のため隔離というのが基本ラインになっています。武漢でも最初は、有熱者でもPCR陰性であれば抵抗力のある若者は帰していたのでしょう。その若者が偽陰性であれば、看病していた無免疫のお母さんやお婆さんが、年齢とリスクファクターで発病し重症化したら悲劇です。入院する病院がなくて即席で、中国軍が野戦病院を作ったのをみて、首をかしげていたのは我々日本人です。日本も、PCR陽性でないと入院しないというスタンスはやめたほうがいいです。時すでに遅しですが、熱、咳→則入院(観察病棟、基準を設けて隔離病棟に転送)をして社会、家族から距離を開けなければいけません。観察や隔離病床を提供する病院は少ないでしょうから、大変厳しい局面になりつつあります。重症肺炎に移行する前に、安静隔離ができなければ、新型肺炎は大正時代のスペイン風邪なみの、壮絶な状況になるでしょう。

 呼吸器や人工肺(PCPS,ECMO)で救命できる能力は、現代医療にありますが、重症肺炎でそれらを使用する局面が数千人になると、医療への負荷は絶大です。そもそも双方とも、肺炎を治す目的でなく、窒息酸欠寸前のものの補助にすぎません。呼吸器では一時間に3-4回だれかが痰を取ったり、呼吸器の設定確認をしなければいけません。人工肺になると、心臓に逆行した酸素血の送血ですので、見かけは酸素飽和度があがって、肺を休めている気がしますが、心臓には多大なる後負荷がかかり続けます。そして太いパイプを首や太ももに入れるので、そのトラブルは凄惨なものがあります。数千台の呼吸器、数百人のPCPSが日本全国でフル稼働するよりは、重症肺炎防止のために早めに入院安静対症療法と思います。

 簡易キットや特効薬は1年ありません。PCRは結核、淋病、クラミジアなどで日常茶飯の検査ですが、検体を取る人、運ぶ人、検査する人にとっても治す方法のある病気だから、気安くやっているわけです。一回の検査で出なければ何回でもできるのが、PCR検査の良さです。すぐに安静隔離加療ができる、ネットワークを、金をかけて作るべきです。提供病床数に応じて、莫大な特別予算をあてたら、手を上げる病院はたくさんあるでしょう。また観察病院から退院しても、また発症すると、目くじらを立てる人がいますが、そういう病気と諦めてもらって、また振出しに戻るで加療したらいいのです。この病気にかかると、現在、職業的不自由だけでなく、社会的な弱者になってしまいます。はやく、熱咳とくれば、保護してもらえる先を確立してもらいたいです。難病でなく普通に人類がかかるひどい風邪という認識になれば、また人々の往来も戻ってくるでしょう。