心房細動治療

Catheter Ablation for Atrial Fibrillation with Heart Failure.ニューイングランド 2018年2月号

心房細動では年間5から10%の人が、突然の塞栓症で大きな麻痺や広範な臓器虚血で大変なことになります。頻脈が続くと、心臓もくたびれて、心不全に突入してゆきます。脈を抑える薬は副作用との両刃の剣の闘い、これも大変なことです。まして心不全があれば、確実に利尿剤が入りますから、電解質狂って新たな不整脈が出現したりします。利尿剤で血液が濃くなって血の塊を作りやすくなります。心房細動合併の心不全は薬でも細心のケアが必要になるわけです。

心房細動に悩む350人の本物の心不全を集めした。その証に心移植待機、もしくはペースメーカーで脈拍を保証する必要のある状態の方々を世界中で集めました。平均年齢65歳でした。人工臓器の大好きなユタ大学がまとめました。これらを割り振って、カテーテル治療で心房細動を治した群と薬で押さえた群にわけて、心不全の程度、脳卒中の程度、死亡を比較しました。薬だけのチームも20人はやっぱりアブレーションをするようになったようです。薬だけで心房細動を抑える薬の内訳は書いてありませんでした。カテーテルアブレーションは、左心房を隔離する方法で、食道エコーで心内血栓を調べながら慎重に行ったようです。成功率100%近いようでした。双方抗凝固はしっかりしていたため、脳塞栓に有意差はありませんでしたが、死亡率はカテーテル組で半減(13.4%対25%で危険率50%減)、心不全入院も半減していました。

 先にペースメーカーを植えていたら、何でもしやすいでしょう。薬をドカンと投薬し心房細動も抑えられたが脈を打たなくなったり、アブレーションでは思いっきり焼いて房室解離になっても脈拍はペースメーカーが保証してくれます。心不全になっても脈を抑えて、心拍出量を増やすことも自由自在です。

 最初から安全保障でペースメーカーを植えていると、医者も患者も安心して、治療ができるということになります。また詳細な心電図情報がリアルタイムで追跡もできるメリットもあります。ペースメーカーの植え込みをたくさん執刀した時期がありますが、そんなにストレスのある治療ではありません。最近はMRIも可能で、生きている限り心電図情報が蓄積でき、異常があると携帯電話に緊急警報が遠隔指令してくれます。

心房細動の外科は、心臓を一回取り出すぐらい切り刻むメイズ手術から始まりました。手術の最中、左心房全周を氷や電気で焼いたりする荒療治もあります。現在は優秀な専門の職人循環器が上手に焼いてくれます。成功率100%近いのは日本でも得られる成績です。90歳で心房細動デビューのお年寄りが時々来ます。急に老け込んで心不全で寝たきりになる人もいます。ペースメーカーを入れて、アブレーションして、元気になるのであれば、考える価値のある話です。