日本人は動脈硬化に強い

Coronary Calcium as a Predictor of Coronary Events in Four Racial or Ethnic Groups

ニューイングランド2008年1月12日

冠動脈の石灰量で冠動脈病変を予測する試みがあります。冠動脈石灰の強い人種は、白人、東洋人、ヒスパニック、黒人でした。しかしながら発症となると順番が異なります。白人、ヒスパニック、黒人、東洋人となります。単純に石灰量だけの測定は、CTをとれば数秒でわかるし、造影剤もいらないし、カテーテルもいらないので、スタンダードな動脈硬化判定に使えると思います。命にかかわる冠動脈病変があるかどうかは、家族歴、高血圧、糖尿病、喫煙、男性、年齢で、西洋医学を習った医者なら80%は的中しますが、それに数%ですが客観性を追加する指標になります。全身の動脈硬化もCTで研究されています、次にその集大成的な興味深い論文を紹介します。

Coronary atherosclerosis in indigenous South American Tsimane: a cross-sectional cohort study ランセット2017年3月17日号 2017年トップ100ランキングの論文。

動脈硬化の指標として動脈の壁に石灰が沈着します。その程度を2000年からCTを用いてスコアーにしている国際研究があります。遺伝と動脈硬化、人種と動脈硬化、人類史と動脈硬化も研究されています。ミイラやツンドラで発見された氷漬けエスキモーに全身CTをしています。Atherosclerosis across 4000 years of human history: the Horus study of four ancient populations ランセット2,013年4月6日、にもあるように、ミイラや氷漬けの雪男をCTすると、20台より30台、30台より40台において腹部大動脈から両側の腸骨動脈に左右の脚にむけて分岐がありますが、そこに石灰化がたまりやすいというのが4000年前の人にもあったようです。年齢をつむと年輪のように石灰化がおこる。エジプトにはミイラがたくさんあって、現代のエジプト人と比較してみても、割合末梢動脈硬化の強い傾向の現代エジプト人なのですが、ツタンカーメンみたいな人達も動脈硬化が強い傾向があって、4000年間ぐらいではエジプト人の遺伝子的な動脈硬化傾向は変わらないようです。

 ボリビアにチマネ族という少数部族ががいて、感染症で苦しんでいていつも熱や下痢などで体に炎症を起こしている部族がいます。日本人なら常に抗生剤や消炎鎮痛剤を常用するような状態の人達です。原始人のような生活で平均寿命も短いのでしょうが、人類で最も狭心症が少ない部族のようです。この人たちをなだめすかして、吹き矢で殺されそうになりながら、なんとか731人採血とCTをしたようです。血圧や採血結果は健康な長生き中高年の糖尿なく、コレステロールもちょうどよく、中性脂肪もほどよく、悪玉も正常範囲でした。圧巻はアメリカ白人黒人スペイン系中国系、ヨーロッパ人、韓国人、日本人、チマネ族のCTから得られた動脈石灰化指数と年齢における点描図がありました。動脈硬化のひどい順にアメリカ白人黒人スペイン系中国系、ヨーロッパ人、韓国人、日本人、チマネ族でした。チマネ族と日本人は同じレベルで、アメリカ人の10分の一の動脈硬化という結果でした。アメリカヒスパニックがスペインとチマネ族の中間と遺伝子が想像されますが日本やチマネの動脈硬化指数の5倍でした。全身の炎症が動脈硬化であるという西洋人の発想は根底から覆る結果です。

 しかしながら、チマネ族はこれからおいしい、ファーストフードや夜更かしのスマホの洗礼をうけるでしょう。コンビニもできたりして、魚を取ったり動物を捕獲してご飯を食べることが少なくなるでしょう。だんだん西洋生活になってアメリカヒスパニックと同じ運命になるかもしれません。一方、日本人はどっぷりアメリカ食をこの40年食べてます。車社会で、霜降り肉ブランド牛文化にしてこのデータでした。日本人は冠動脈疾患にはとても強い遺伝子をもっているということで、安心しましょう。尚南北アメリカ大陸の生粋のインディアンやインディオは血液型がほぼO型です。日本人と遺伝子が似ているのでしょうから、O型の日本人は特に強いかもしれません。A型は腹部大動脈瘤が多いというのを血管外科医は昔から疑っていることですし、あながち嘘とは思えません。