Numbers

NNT.comというサイトがあります。あまり頻回に更新されていませんが、アメリカの中立の立場の有志ドクターが一流論文からNNTを導いていました。Numbers needed to treatがNNTで、前回説明しました。

2,008年1月に更新した内容を、そのままお伝えすると。Percutaneous coronary intervention outcomes in patients with stable obstructive coronary artery disease and myocardial ischemia: a collaborative meta-analysis of contemporary randomized clinical trials.JAMA内科版2014を読んだんでしょう。それ以外も高級雑誌をいくつも読んで、有志達は計算しました。125人の無症候狭心症にステントを植え込んだら一人命が救えるがno benefitと宣言、(僕ではありませんよ)、50人に一人脳梗塞や死亡などのシリアスな合併症があるが如何。とやるわけです。社会保険の意地悪な査定担当者はこう考えます。125回ステント治療すると。一回、100万円使って、一億二千万円で一人の命が救われるが、二人以上に死者や後遺症の残る合併症で介護や医療費で億円単位の出費となるかもしれない。ステントをせずに内科治療だけで様子を見ると、125人様子を見たら一人不慮の死者がでるが残りは生存、しかも合計して数億円以上出費が抑制。厳しい―ですが社会保障を俯瞰する行政官や政治家はこう考えるでしょう。

高血圧治療に関しては10人に一人看過できるような副作用があるが、125人に一人死亡を防ぎ、67人に一人脳梗塞、100人に一人心筋梗塞を防ぐから大変結構であると宣言していました。125人に一人でも結構かどうかの判断は主観にすぎないようです。

First-line drugs for hypertensionコクランライブラリーからですが、50000人データで、降圧剤投与、非投与論文を探します。そのなかで降圧剤群では700人総死亡、投与しないと900人になるとNTT125人になります。

簡単に統計処理してみましょう

薬内服で非死亡243人、薬内服で死亡7人、

薬なし非死亡241人で薬なし死亡9人として、カイ二乗検定をしても有意差はありません。

おそらくNNTの位置づけは、統計的な有意性よりも、薬や治療を行う上での患者さんや医療経済を監視する人が理解しやすい数字という以外ないのでしょう。

因みに頭痛に対する針治療のNNTは3人で、NNT.comの最高評価でした。

一粒飲んだらころりと治る薬、一回でたちどころに病が消える手術などは幻想にすぎないということでしょう。投薬や治療の取捨選択は、医療人でなく患者さんや行政の方々の意見も聞くことです。出したいから処方、やってみたいから手術はとりあえずやめましょう。