Obesity in the elderly: More complicated than you think
クリーブランドクリニック雑誌 2014年1月
高齢者の肥満についての論文です。高齢者においてはただやせればいいというものではなく、肥満でも75歳以上まで元気であれば、肥満が病気に直結していないことを認識すべきです。ただし肥満度30以上ですと、IL6やTNFαなどが増加し、次第に動脈硬化に発展するため、介入すべきのようです。むしろ肥満のほうが栄養豊富で、癌や心血管病と戦える力があると考えるようです(obesity paradox)。閉経後は女性ホルモンは脂肪細胞からも作られるようで、よく言われるように骨粗しょう症も肥満には少ないようです。ただし、運動療法励行は必要で、既存の筋肉の維持、骨密度維持のためには必要です。運動しないと、筋肉の中に脂肪が霜降り肉になるサルコペニアになります。私見ですが、ふくらはぎ の血栓評価のエコーを仕事柄よくしますが、ヒラメ筋は骨に接して血液充満のみずみずしさ、腓腹筋は霜降りサルコペニアをよく反映します。運動不足の人は腓腹筋は水っぽく浮腫状で輝度が高まります。山歩きをする肥満体の78歳女性では腓腹筋は血液充満の低エコーをキープしています。腓腹筋とヒラメ筋の輝度の差をもって、脂肪肝ならぬ脂肪筋と命名して、内輪でサルコペニアの診断に使用しています。
皮下脂肪が多ければ、多いほど、死亡率はあまりあげない、心臓血管死はあまりあげない、心臓血管病にかかるリスクは上がる、すなわち寝たきりになって長生きしてしまう可能性、生活の質は下がる。lean massという筋肉量の指標を上げるとすべて好転します。しっかり炭水化物もタンパク質もとった食事で歩いたり、スクワットしたり、いろいろがんばれというところでしょう。高齢者肥満を助長する薬としては、ガバペンチン(日本ではプレガバリン)などの神経因性疼痛治療剤、抗うつ剤、インスリン使用者(高齢者では運動療法を加味せずインスリン量だけ上げがちです)、βブロッカー(心臓運動量を敢えて落として降圧、心不全予防の薬で、代謝がわるくなります)使用者は要注意のようです。
この論文では最後に、bariatric surgeryを高齢肥満者にも勧めていました。合併症は多くなりますが、成功するとよりよい老後が迎えられる根拠論文を提示していました。日本ではまだ無理でしょう。