男性乳がん
Breast Cancer in Men ニューイングランド20186/14
男性乳がん特集がありました。わかりやすい表があります。その中で、全米対がん協会のデータを使用していました。以前この協会の、患者パンフを紹介したと思います。癌予防の食事とか避けるべきサプリなど。患者さん目線すぎて、およそニューイングランドに引用されるようには思っていませんでしたが、学者も認める、がん協会であることがわかりました。そのデータでは、アメリカ女性の8人に一人が乳がんになる可能性(逆に7人はセーフ)という表現をしていました。男性乳がんは100人で一人かかる可能性があるという言い方でした。乳がんにかかったことのある人、乳がんで死んだ人、乳がん治療中の人、乳がん再発で治療の人全部手を上げてみると何十年間累積すると、こういうデータになるということらしいです。年間では10万人に1.4人で、女性はその8倍というデータもありました。男性乳がんになりやすいのは、黒人腫>有色人種>白人のようです。親等内での乳がんは危険です。女性ホルモンと男性ホルモン受容体陽性のものが99%占めるのが特徴です。BRCA系(がん抑制遺伝子で家族性に変異を血液で証明、アンジーは両側乳、卵巣子宮切除)は少し関係。男性乳がん後に重複癌ができるのは、DNA修復遺伝子の変異が関与するとのことでした。また女性化乳房も危険因子です。男性の乳房肥大の現象で、大酒、制吐剤、抗うつ剤、利尿剤によって副腎のホルモン変化で女性ホルモン優位となって発生します。
タモキシフェンの系統は、女性ホルモン受容体をブロックし効かなくさせる薬で、男性乳がん治療においても標準抗がん剤になります。副作用として、更年期女性と同じようなホットフラッシュ、骨粗しょう症、前立腺癌リスクも当然あります。精巣のテストステロンから女性ホルモンができますので、この薬は有効です。アンドロゲン(男のホルモン)にアロマターゼでエストロゲンができるのは副腎で、アロマターゼ活性ははるかに男性では少ないとされます。ですからアロマターゼ阻害剤は使用例も少ないし効果はわからないようです。視床下部からのゴナドトロピン遊離刺激ホルモンを競合阻害や拮抗阻害する薬は、前立腺癌治療で使用経験が豊富なわけですが、男性乳がん治療ではまだよくわからないようです。
日本の癌学会のデータベースでは、いくつか興味深い見解がありました。AGA治療や前立せん肥大の薬もリスクファクターと表現していることです。服用中の患者さんに注意を促す必要があります。