10-year outcomes after monitoring ,surgery, or radiotherapy for localized prostate cancer
2016年10月ニューイングランド。オックスフォード大学研究です。
1999年から10年間82000のPSA(前立腺特異抗原)測定して2664人が限局癌。0.3%でちなみに日本でも区民検診などでもこの頻度です。17人(1643人中)だけが10年間での前立腺による癌死でした。
研究は1643人がエントリーして、慎重な経過観察組vs外科摘出組vs放射線治療組の巴戦を行いました。死亡率に有意差はありませんでした。転移は33人経過観察組に出て、外科組や放射線組は13人で統計的に転移は観察組で多めでした。局所増殖は経過観察組は112人見られ多めでしたが、ほかの組も50名は再発していました。早期がんは経過観察でも70%は無事故が得られるという論文でした。Watchful waitingをしてPSAを数か月に1回測定して急増したら転移を調べ治療に取り掛かるのでも予後に差はないという結果です。
もう一つ
Follow-up of prostatectomy versus observation for early prostate cancer.
ニューイングランド2017年2月号
20年間で731名の限局前立腺癌を拡大前立腺摘出術組と経過観察組のミネソタ大学の後ろ向き研究。前立腺癌死はオックスフォードより高く約10%ありました。母集団が20年間で60%死亡する集団の研究です。結論は死亡率には有意差なく、転移などの進行は手術群に少ないようでした。ただし手術によって6人に一人男性機能や排尿障害がでており、観察組より何倍も多いのが欠点とのことでした。こちらの観察組は観察オンリーであるという特色があります。転移や局所増殖の際は切ろうというオックスフォード的観察組とはことなります。
二つの権威論文などから類推するに、がん検診で前立腺マーカーのPSAが上がっていたら、心配なら、直腸にプスプス穴開けて生検しましょうか。20人に一人は癌がある。その癌をほっといても、手術をしても、寿命は大きくかわらないというので良いでしょうか。60歳で限局癌がみつかって、あわてて手術をすると、その後の排尿や男性機能などを犠牲にすることもあるということにも目を向けましょう。ロボット手術で絶対手の震えなどが皆無の、ロボットアームで前立腺だけとるから、神経損傷なく大丈夫と専門家はいうでしょうが、それだけとって予後にどんだけ影響するか、取るなら周辺のリンパ節などの確認はどうするのか、といった疑問も残ります。男性機能より命が大切という根拠は、この死亡率の低さを見たらどうでしょうか。
ホルモン療法も色々ありますが、60台で治療中に急激に冠動脈病変が進行したり、ホットフラッシュがおきたり、艱難辛苦を訴える方を散見します。80歳以上の方はホルモン治療で、弱ってゆく方もいらっしゃいます。
スクリーニングは欧米、日本とも一律の検診としてのPSA測定については否定的で、むしろ検査治療による不利益が上回ると考えられており。家系の前立腺癌の有無(BRCA変異含めて)、人種(黒人)差、ライフスタイル、多々考えて50歳以上からのんびり考えなさいとしています。49人前立腺癌を早期に見つけるとようやく一人癌死を防ぐことができるということです。80歳以上ではもともと多くの確率で(半数という報告をどこかでみました)病理的に癌を含む前立腺組織をもつとされています。