恋愛のホルモン

恋愛のホルモン

Kisspeptin modulates sexual and emotional brain processing in humans 2017年

臨床研究雑誌 J clin Invest IF13点の雑誌です。ネーチャーと同じような、投稿規程のようです。

キスペプチンKISS1遺伝子で作られるたんぱく質で、G蛋白受容体に接合します。思春期到来とともに視床下部からの性腺刺激有利ホルモン(ゴナドトロピン遊離ホルモン、LH-RHなど呼称色々)で下垂体から、FSH(卵胞刺激ホルモン、男性ではセルトリ細胞刺激で精子形成、男性更年期から増える)、LH(女性ではサージで排卵、男性ではライデッヒ細胞からのテストステロン分泌)分泌刺激をします。当初はメラノーマや乳がんから産生されるたんぱく質と思われていたようです。性腺刺激をするだけでなく、有難いことに抗ガン作用、腎保護作用などいいことばかりのホルモンです。視床下部から分泌されて主として下流に行くと思われていましたが、どうも恋愛行動を制御する、大脳辺縁系にも発射されて、ひと目ぼれに関与するようです。

 大脳辺縁系は情動や性欲だけでなく、乳頭体は長期記憶、海馬は短期記憶、扁桃体は恐怖など忙しい大脳の基底部の構造物です。クリューバー・ビューシー症候群はこの辺りが、事故や酸欠でやられますと、24時間性的行動を敢行するようになって、大変まずいことになる病気です。治療は抗てんかん剤などでおさえるほかないようです。

 論文では29人の異性愛男性に、キスペプチンと偽薬を注射することで、脳内でいかなる反応あるかを検討しました。キスペプチン投与でのホルモンはLHが上昇とのことで、テストステロンは遅れて上昇することでしょう。セクシー画像でのMRI分析では、キスペプチン投与でより一層海馬あたりが興奮するようです。何でもない画像では、キスペプチン投与でも辺縁系興奮はありませんでした。不快な画像ではキスペプチン投与で恐怖や落胆が中和されるようです。キスペプチンは性ホルモンの上流のホルモンで脳内伝達物質であることがわかりました。女性ではどういう働きをするのかはまた調べます。