以下の論文は、altmetrics best 2017 の論文です。論文評価指標で引用回数を測定して、数の多いものからランキングしていました。海外のマスコミによく取り上げられたようです。女性医師が受難にあう#Me Tooも大切ですが、女性医師が今後の医療と介護の主役に絶対なるので、数回に分けて引用回数の多い論文を紹介し、コメントします。
Comparison of postoperative outcomes among patients treated by male and female surgeons: a population matched cohort study 英国医師会雑誌2017年10月10日
女性外科医と男性外科医の比較、国民皆保険のトロントでの研究。104630人の患者を3314人の男性外科医と774人の女性外科医で手術を分け合ったその結果は。多勢に無勢ですから、経験や年齢をマッチさせて、患者層(年齢、性別、居住地、年収)などもマッチさせて、評価しました。心臓手術や胸部手術などは数が少ないのですが、総じて男性が手術するより、手術死亡も少ないし術後の回復や再手術も少なかったようです。理由として、患者との交流のうまさ、知識と経験を優先させ理屈に合わないことはしないという女性外科医の良さを上げています。術後管理のきめの細かさもあげていました。形成外科なんかは女性の方がよいようでした。
やってみせ、やらせてみせて褒めてあげそうでなければ人は育たぬ というのが科学と技術の海軍教育(山本五十六)、see something, do something, teach somethingが西欧外科医の世界です。
女性外科医の問題として同性のメンター(指導者、あこがれ)の外科医が海外でも不足しているとのことです。メンターには私見ですが、2種あるというか必要です。ぶっきらぼうで手術がうまくて口数の少ないスター外科医、優しくて手術を教えながら後輩に経験させてくれるけど苦労する後ろ姿も見せる先生。女性医師もそういう同性の医師が、上司にいると、双方からいいところを吸収して、立派な優しい外科医が多く生まれるでしょう。医学生は半数が女性とのことです、外科医離れといわれる時代で、指導者としての女性外科医がどんどん出現する時代が望まれています。失敗しませんという外科の美人女医が、ドラマになるぐらいですから、日本での立ち位置はどうなんでしょうか。私がかつて所属していた心臓外科は夜中の緊急手術もあるし、10時間立ちっぱなし、丸二日不眠不休とか、過酷でしたが、現代の体格の良いガッツのある女性だったら大丈夫ですよ。過酷な現場はたくさんの経験、知識、技量を与えてくれます。
Insights into Sexism: Male Status and Performance Moderates Female-Directed Hostile and Amicable Behaviour PLOS one 20152月号 何万回も引用された論文です。 紅一点の状況での、男性の行動生理研究の論文です。Halo3というオンライン対戦ゲームで、女性を偽装してドッキリ参加した際の、男性からのコメントを分析しました。レベルの高いプレイヤーは女性に対して紳士的で、励ますコメントをいつにもましてより多く発信。レベルの低いプレーヤーは、攻撃的で、否定的なコメントを女性プレイヤーに発するようでした。プレイヤーの階級によって、いじられる回数や内容が変わるという結果ですが。オンラインゲームが男性の牙城a bastion of sexual stereotypesということで、女性が男性の多い環境へ突然参入したらどうなるかという、ドッキリ(今はモニタリングという和製英語ですか)研究です。外科の医局に入ると女性医師は当初はこういう環境に面食らうと思います。心配いりません、じっと人間関係や年齢差や階級を観察して、その反応を分析すれば、すぐにサバイバルできて、スキルの高い外科プレイヤーになることができるでしょう。