冠動脈の目詰まり

PCI for stable angina: A missed opportunity for shared decision-making

クリーブランドクリニック雑誌 2018年2月

心筋梗塞は心筋が壊死する病気で、冠動脈内のコレステロールと中性脂肪のゴミが炎症を起こし、ほんの少しの病変でそれがはじけて(プラークラプチャー)、はじけた末梢に泡のような小血栓がつまり、治療に取り掛からないと大変なことになる病気です。狭心症はコレステロールのゴミがたまります。2mmの血管の面積が十六分の九ほどゴミに占有されるとようやく症状が出ます。駅の階段上ったら、キオスクのまえで、あえいで胸が痛くなるけど10分以内に治るという、狭心症です。

例えば家系に狭心症心筋梗塞がいるから心配な中高年がいます。たまたま受けた冠動脈CTで石灰化や狭窄病変疑いあり。最近のカテーテル検査は日帰り感覚になっています。すぐにカテしました、結構な狭窄が数か所ありました、カテの台上、耳もとで、ちょっと狭いとこあって危ないからどうしますか、と言われると?人間の心理で医者も患者も治療したくなります。以前は、負荷テストで虚血証明して、外科と内科で協議して、広げるとか、バイパスするとか、両方を考えるとか、ありましたが、今はどうなのでしょうか。症状の全くない安定的な狭心症患者へのステント治療について、

Percutaneous coronary intervention in stable angina (ORBITA): a double-blind, randomised controlled trial ランセット本年今月号 など薬治療とステントでイベントや死亡率に差がないことをうけて、

確認とまとめをクリーブランドは公表しました。

要点は、冠動脈病変あれば抗血小板と高脂血症治療ありきである。虚血症状がなければ、ステントを慌ててしなくても、薬治療の者の中で狭心症による死亡はない。ステント治療を慌ててしたものの中には、2年間は狭心症予防の保証があるが、心筋梗塞予防にはならない。ステント治療は、心筋梗塞の予防にはならない。ステント治療は完全な血行再建ではない。バイパス手術は狭窄部を迂回するし、安全に完全に血行再建をおこなえるので、心筋梗塞予防、虚血予防になるのが、根本概念である。

 ただし現在は、ステントも開存率が大幅に上がったし、抗血小板剤も効果的になったし、日本の循環器内科は優秀ですし、ステントがつまってもすぐに外科にまわしたり、自分たちでなんとかしたりしますので心配ないと思います。ただしバイパスをしようと外科医が当たりを付けた場所に、先客のステントがあると、手術する場所がなくなってしまうので、少し外科のためにも手術できる場所を残してください。クリーブランドの先生も言っていましたが、よくよく説明と合意を得るようにしてください。“配管工にたとえて、パイプ掃除などのたとえで、詰まったところを何とかしましょう。は、往年の古き心臓の医者が手術説明で患者をなごますときに使用したフレーズです。これはやめましょうとクリーブランドは言っていました。

無症状への血行再建には、二つ危険があります

〇ステントを入れたり手術をしていることにまつわるリスク(術中の梗塞、入院中の脳梗塞肺炎)でやらずもがなが、1パーセントはあるでしょう。

〇足でもどこでも、一度血行を増やすのは良いことのようですが、もし急速にステントやバイパスが閉塞したら、いままで無症状だった部位にとんでもない虚血がおそってきますよ。

ぐらいの説明で、それでも治療を受けたい人に治療をしましょう。