Delirium in Hospitalized Older Adults 2017年10月号
ニューイングランドジャーナルの特集で、老人の入院におけるせん妄を取り上げていました。よくいわれるように、ご老人においては短期間でも入院すると、いわゆる認知機能が低下します。
その対策と方法について述べていました。
一過性で可逆的に正気にもどるのが老人性せん妄の定義ですが。その症状は多岐に及ぶようで、早期に発見することが、自宅に帰って真の認知症にならないようです。暴れたり、暴言をはけば、だれでも気づいて、静かな個室で家族と面会させ、なぐさめる、など日本と同じ対策を取ります。身体拘束は訴訟社会のアメリカでは考えられないのか、記載はありませんでした。恐ろしいのが、おとなしいく意欲を失った状態であるhypoactive deliriumです。職員も医師も元の患者像がわかりませんから、おとなしくて幸いとなって、取り返しのつかない認知症に移行するようです。あとは超インテリの患者さんは少し とボケてちょうど普通の人ですから、その変化に家族だけが気づくこともあります。
病気で入院して薬や手術のために安静余儀なくされています。手術後の安静もよくないようで、侵襲の多い心臓外科では必ずせん妄のようになって、半数以上が長くもしくは永久に認知機能がもどらないという報告もあります。超高齢者も弁の手術が可能な時代で、その総説のまとめを計画していますが、弁は治っても、頭脳がおかしくなるのは考え物です。
鎮静効果のある薬物を普段からとっていると、入院時に大変になるようです。睡眠剤で、くせにならないとして日本では老人処方で看過される非ベンゾヂアゼピンは入院中に漫然と投与するとむしろせん妄の危険因子となるようです。日本でも使用量増加中のオピオイド系の鎮痛剤(アメリカでは市場の80%、トラマドールなど)も安静入院中はせん妄の原因になります。ベンゾヂアゼピンそのものは少量投与でむしろせん妄を防ぐ効果もあるようです。要は安静にして、3食賄いつきの状態で、体そのものが休まっている老人をさらに、夜間眠らせることをあえてすると、せん妄がおこると言うことです。職員は大変ですが、夜間もトイレ誘導、声掛けなどして、ここはどこ、私は誰にならないようにこれ務めよという、厳しいアメリカの病院コンプライアンスが表になっていました。前述の抗ヒスタミンやH2ブロッカーも怪しいようです。
せん妄時の薬物投与は、結局日本で昔から行われている、体動を興奮を抑えるセレネースとリスペリドンという錐体外路障害のある薬の使用をガイドラインは認めています。欧米では、身体拘束はしない代わりに、上記投薬をしっかりして、安静状態を作り出して、安全性をたもつという趣旨のようです。