Sign me up
アメリカの医科大学の学生が、卒業を切り上げて、コロナの前線やコロナでスタッフ不足の医療現場に、sign upさせる大統領命令があって、美談と紹介されている。敗戦国が言える筋合いではないが、太平洋戦争時、文系学生は繰り上げ卒業、工学系医科大学生だけが、学業繰り上げての徴兵を回避されていた、歴史をみると、ポストコロナでは、sign upの基準が真逆になっている。
医学を志すものや医者は、たとえ一人だけでもいいからコロナの患者さんと実際に接触して医療活動に貢献したいと思う。町の開業医の自分が、発熱患者さんを、診察室を改装して重装備で診ているのはその気持ちがあるからである。他人に迷惑かけずを前提に、患者さんを救いたい。それだけである。コロナとの戦いは数年続くので、眼科から精神科や病理や法医学まで何らかのコロナとの戦いをしなければいけない。予防も、治療もないので、全員集合して、挑んでいくことになる。
タモリは、やる気のあるやつは去れ、というがこれも真理である。コロナ患者さんを診断、入院入所の算段、対症療法、重症化の判定、重症者の救命治療(人工呼吸器、人工心肺、これらの離脱、理学リハビリ)、退院対所判定など、その具体的プロセスは、あらゆる領域のプロのテクが必要である。気合ややる気で、何とかなるものではない。淡々とタモリのように、微妙な突込み、ノリ突込みや、笑ってごまかすテク、清濁併せ持つ手練手管がないと、それこそ医療崩壊する。自分の本来の業務を鍛錬した知識技量でこなしつつ、余力でコロナ患者と立ち向かう。このコロナは、医療看護事務経営のプロが各々の技量を駆使して、言い方は悪いが片手間で対応しないと、医療経済が損なわれ、従来の医療レベルが低下してしまう。全力でコロナと向き合っても、かなわない。診断も治療もないからである。やる気だけでは、患者も医者も社会も崩壊する。研修医たちが宴会して陽性者がでた、けしからん、というが、彼らはアマであるので、別にモラル棄損以上のことをしたわけではない。陰性や復帰可能となったら、一から配属した各部署で特訓すればいいのである。コロナの前線に研修医が立っても患者のためにならない。コロナとの戦いは実戦であるので、訓練をうけたものでなければ研修医本人も含めて患者も被害を受ける。コロナに対して、気合だけでは、負ける。人工呼吸器が足らないという情報に対しては、その根底にあるものを正直に民間人に周知させた方がよい。患者さん全部を助けることも大事であるが、『誰に優先して呼吸器を装着するか』、といった、究極の生命倫理の社会実験が現実にイタリアやNYでおこっている。医学史、医療哲学、医療倫理、医師法に精通した医師や学者も、コロナの世界にsign up してもらいたい。