ポストコロナー自粛中のあれこれ

コロナ以外の病気に関して、自粛期間になにがあったかを予想してみたい。

この期間、心筋梗塞や動脈瘤の破裂などが少なかったのではないか。3月は、春めいてウキウキする時期で、旅行先やゴルフの最中に心筋梗塞や動脈瘤破裂や動脈解離がよく起こる。寒中の、一念発起のランニングや剣道の稽古などで、打ち取られた方を知っているものからすると、不要不急の外出を控えることで、不慮の心血管事故は少なくなったのではないかと考えたくなる。また、医療機関の受け入れが大変であることも逆にprosに働いた可能性もある。救急搬送されたら、隣にコロナ肺炎のストレッチャーがいることも報道されるのも、注意喚起になったのかもしれない。心血管系に自信のない人は、薬を欠かさず内服して、無理をせず、体にいいものを食べて、睡眠をとって、時折ストレッチなどをしたりして、健康的生活になっているのではないか。家でじっとしていると、絶対に悪化しにくいのが、心不全である。風邪をこじらせたり、出先での水分出納がくずれて、脱水や溢水で不整脈や感染から心不全が起こるのである。ステイホームでかえって、みんな胸水は少なくなったし、指標のBNPは軒並みさがっている。4月は気胸と腸閉塞のシーズンである。これも、普段慣れないハイキングや旅行も控えるであろから肺の嚢胞が破ける自然気胸は起こりにくいと思われる。外食して、花見をして、おなかを冷やしておこる恒例の腸閉塞もおこりにくいであろう。高齢者が、外食で対面揚げたて高級天ぷらを食べすぎて起こる、胆石胆嚢炎も少ないであろう。酒飲みの膵炎は、家でテレワークしながら、昼から一杯やっていることもあろうから、気を付けないと、いけない。糖尿病は、自粛で運動機会が減るので、HbA1cが悪化するのかと思ったら、ほとんどの人が、横ばいである。デパ地下の高カロリーの菓子や総菜がそもそも手に入らない、スーパーの総菜は既に飽きた、3食分を家で食事をするからむしろカロリーの計算をしてしまう、万歩計を付けて運動するからむしろ腹が減ることがわかった。など、糖尿病の栄養指導や運動指導の盲点を突く発想が、このステイホームでおこっているのが、町医者の実感である。医療費削減にも効果があったのではないか、長期処方で、患者指導料などのレセプトへの負荷が極端に減っているはずである。病院では、不要不急の眼科整形の予防的手術、循環器系の予防的ステントやアブレーションが延期されているようであるから、経営面では大変であろう。宿泊や飲食飲酒風営法の関係の経営不振も大変であるが、医療経営人も実態を言わなければいけない。コロナ病床を千床単位で東京都は造成したようであるが、現実に新規患者数が減ってきたら、どのような予算の配分になるのか。計上されたコロナ予算はそのままで、余剰病床や労働力を、延期された予定手術の併施に使えるのか。自粛緩和とともに、活動量が増えて心血管病患者も増加するのは予想されるし、必至の第二波のコロナ感染と重なるとどうなるのか。

 いわゆる出口戦略などと豪気な言葉遣いで、医療だけでなく各業界で言っているが、相手は生もののコロナであるので、答えはないのであろう。船橋洋一先生が最新の文芸春秋で述べておられたが、正しく出口に導くことのできる主導者が、今後の日本だけでなく、世界の指導を担うということのようである。自粛の最中に、世界情勢もガラリ、ガラガラ変わり、EUバラバラ、国連無力、米中険悪、全世界不況。指導者としての登場人物は、予想もしない地域から突然現れるのか。ありがたいような、恐ろしいような。