An outbreak of synthetic cannabinoid-associated coagulopathy in Illinois.
ニューイングランド2018年 9月27日
イリノイ州で合成大麻使用の34人に出血イベントによる入院、内一人死亡。全員が血尿から、胃腸出血、脳出血など、大出血患者出現。合成大麻をすって、短時間で発症したようです。
大麻はカンナビノイド受容体を刺激します。マリファナ本体には何十もカンナビノイド受容体刺激の物質があるようです。CB受容体には二種類あって、CB1は免疫系にCB2は中枢神経作用があります。特にCB2刺激する成分はかなり昔から合成されています。その種類も多く、抗うつ作用や抗精神病薬としての効用の可能性も研究されています。
悪いことを考える人がいて、CB2を刺激する薬ができるやいなや、その辺の葉っぱに吹き付けて、合成大麻として吸引させているようです。何十年前から特殊な呼び名 K2とかスパイスというstreet nameで、流通していました。大麻より廉価なのでしょう。何回も集団中毒事件があったようです。今回の葉っぱの中には、なんと、殺鼠剤のワーファリンの最強版活性化ワーファリンがあったようです(スーパーワーファリン)。経口摂取では腸管や肝臓で解毒されて血中に回りますが、吸入するとダイレクトに気道血管から体内にはいりますから、短時間で全員血尿発症しました。
ワーファリンは抗凝固剤で、WARFARINの文字には頭文字はウイスコンシン大学で開発された、殺鼠クマリン製剤で、なんとなくワーファリンといわれるようです。アイゼンハワー大統領の心臓病治療に使われ、有名になりました。人工弁置換後や血栓症治療に頻用されています。人体に使用する際は、モニタリングして使用します。風邪をひいたり、ピロリを除菌したり、抗生剤利用の際は血液サラサラし過ぎが怖い、下痢や絶食の時の使用も増強して胃腸出血、頭を少しコツンとうっても脳内出血。何百人と使用してきましたが、いつも頭の中で担当患者さんのワーファリン量と身体状況をグルグルさせています。
麻薬大国アメリカで、規制、取り締まり、厳罰、産出国に空爆や特殊部隊投入など、膨大な費用と人命を投じてきましたが、禁止薬の製造、卸、販売、利用者は増加していると聞きます。より地下にもぐってしまい、中毒依存者の使用するものは劣悪になっているのでしょう。上記のような、ネズミ殺しの散布された、雑草を使った合成大麻の中毒事件で、ニューイングランドジャーナルに堂々掲載。南米のコカインの畑が焼き払われて、合成覚せい剤(貧乏人のコカイン)を近場のメキシコから仕入れている状況などをよく、アメリカのテレビドラマでみます。
ブレイキングバッド、ナルコス、オザーク(これは面白い、英語のセリフも面白い)など、ネットフリックスで見ています。