テストステロンの綾取り

Mechanisms of Action of Testosterone — Unraveling a Gordian Knot

ニューイングランドジャーナル 2013年9月 解説

ゴルディアスの結び目とは、解けない謎という意味で、難しい問題に対する比喩です。男性ホルモン補充療法についてのたとえです。テストステロンは、活性化テストステロンとエストラジオール(女性ホルモンとしては強い活性)にかわります。テストステロンからほんの少し、メチル基をはずしてこちょこちょすれば女性ホルモンにかわるようです。テストステロンはステロイドですから、人によっては糖質コルチコイド作用(抗ショック、肥満栄養貯蓄、血糖保持)や鉱質コルチコイド作用(ナトリウム保持、カリウムを代わりに捨てる、水分保持、血圧保つ)も複雑に関与するようです。男性っぽくなりたい、若返りたい、気分をはらしたい、という思いで使用するテストステロンも、真逆の作用が出ることがあるようです。回春に関しては、男性ホルモン活性だけではどうにもならず女性ホルモンも男性にとってはプラスの作用にもなるのか、複雑すぎて解説の大先生もよく判らない、それこそGordian Knotのようです。

 男性ホルモン作用は別名アンドロゲン作用といって、男性骨格増強と男女二次性徴必須のテストステロン作用、そして謎だらけですがフェロモンと考えられる汗や尿からでるアンドロステロンがあります。アンドロステロンはまた論文を探してみますが、男女ともに発現する性ホルモンで、ステロイド系の中でも脳内に到達するホルモンとして恋のホルモンです。男性骨格増強だけであれば、蛋白同化のみのステロイドを使用すれば、シュワ元知事や”イタリアの種馬”スタローンやハルクホーガンをみれば一目瞭然です。スポーツ界からは永久追放されましょうし、蛋白同化ホルモンを長期常用すると本人のテストステロン産生に抑制がかかるようになってかえって男性機能を損ねるとのことです。はつらつと、運動や仕事に励んで、うっすらと額や、(今は忌避されがちの)、腋窩の汗などから分泌されて、なんらかの周囲の反応をよぶかもしれません。アンドロステロンが血中に分泌されると脳みそが、若返りを楽しんでくれると思います。

 テストステロンを使用しての反応は人それぞれでしょうから、短期使用、効果判定、副作用チェックなどを計画して、漫然と使用するのはだめでしょう。数か月使用、中止、症状発現再開などが望ましいのですが、ホルモンの反応受容体が、それを許してくれるか、だれもわかっていません。からみあった結び目のような問題です。