Influenza Vaccination ニューイングランド 2016年 9月19号
Influenza Vaccine Effectiveness in the United States during the 2015–2016 Season
2017年 ニューイングランド10月10日
インフルエンザワクチンの最近のまとめ でていました。香港型H3N2がメインで、H1N1という例の豚インフルエンザは少ないのが現行ですが、2015年時は豚インフル優勢でした。インフルエンザ様気管支炎で全米を受診した人の中での、各種インフルエンザワクチンの効果判定の論文です。風邪で病院に来たひとが対象で、ワクチンを打ったひとの中でウイルスが検出されない確率を効果ありとしています。50歳未満50%、老人10-30%と効果判定法の限界を承知しておかないと、承服しにくいレベルの効果判定の数字です。
効果判定は難しいです。ワクチン打つか打たないか、風邪ひくかひかないか、病院にかかるかかからないか。2の3乗の可能性が国民にあります。2万人あたりの二重盲検をしようとした場合、まず合併症が出た段階でワクチンのせいか、ワクチン打たなかったからか、持病のせいかでもめます。しかも2万人を8組の樹形図にうまくわけることは科学的に困難でしょう。だから風邪ひきさんの中でワクチン打った人の中でウイルス検出率というのが一番易しいのでしょう。50%効果ありの解釈として、ワクチンをうって風邪をひかず病院に来ない人がいますから、もっと高い可能性があります。しかし鼻のぬぐい液にしっかりウイルスいてもワクチンが効いて元気な人がいるわけで、それまで考えると眠れなくなりそうですので、効果判定のことはこれぐらいで考えるのをやめます。
最近の印象では、ワクチンの有無にかかわらず80歳以上で今まで流感にかかったことのないお年寄りが突如発症して、抗ウイルスの点滴で悪化を回避しています。老人では現行のワクチンでは、風邪をひくとウイルス検出が60%超えるというのも頷けます。
HAはhemagglutinin でウイルスの骨格分子でしょうか、豚も香港も70個以上の亜種があって、これらがワクチン内含有のHA分子とよく似ており量も確保できていればワクチンとして認められるようです。HAに対する抗体産生量がその効果のカギのようです。
子供は抗体産生の勉強中だから2回にわけて注射することで抗体産生を体に覚えさせましょう。風邪はひいてもウイルス検出は半数以上で回避できることになります。
老人はどうも新しい免疫を覚えたら昔のことを忘れたり、同じようなワクチンを毎年打つとかえって免疫が差し抑えられる言うことを上記論文で述べていました。antigen sequestration というようです。ですから老人には3倍量の力価をうつことを米国では推奨する可能性があるようです。次回はこの高容量、免疫増強剤入り、大量生産可能と言われる哺乳類や虫からできたものなどを紹介します。
卵何万個買ってきて一つずつ感染させて、ひとつずつ割ってワクチン作るのもパンデミックでは手遅れでしょう。いくら機械化していたとしても、ワクチン工場の従業員が感染したりしないとも限りませんから。ウイルス学者と製造者チームを交代制でパンデミックに備えて隔離軟禁するような周到な国家は冷戦終結以降ないでしょう。もしコンテイジョンという映画みたいになったらどうしますか。この映画は近年ないオールスター映画です、医学的にもこれこそが重症感染の理学所見という迫真の演出。世界的女優のG・パルトろう、Kウインすれっと などがすっぴんで 発病からbody bagに入るまで淡々と描写されていました。この映画では、人類が1/3感染もしくは不幸な転機となったあと、グラウンドゼロからようやくの2-3か月後、生産ベースとなり、新型生ワクチンの鼻吸入をしていました。現在の通常インフルに対する、鼻吸入生ワクチンですが、NEJMではあまりよくなかったと述べられていました。