アポロンは双子で難産だった

クイックテイク

ニューイングランドでは論文の要約を動画漫画で簡単解説する、クイックテイクがあります。興味あるものをいくつか。たまには英語を映画だけでなく聞かなければ、耳さび付きますから。

A Randomized Trial of Planned Cesarean or Vaginal Delivery for Twin Pregnancy

ヒアリングでまずはギリシア神話知らないとわからない言葉が出てきました。

欧米の教育ではギリシア神話がたとえ話の基本になっていて、冒頭のつかみの部分の聞き取りで躓きます。レート―(黒衣柔和な女神)はゼウスとの間に双子を設けます。正妻のヘーラーは出産に反対です。お産の女神エイレイテュイアを引き留めたため難産になったようです。第一子は安産の女神アルミテスを容易に分娩しましたが、二人目の分娩まで、神様同志のごたごたで9日間に及ぶ難産の末、ようやくアポロン(男前の神様、弓矢の名手、羊飼いの神)の出産という、一連の神話は西洋人の常識なのでしょうか。双子の経膣分娩の大変さのたとえに使われていました。実際には双子は二つの羊膜と二つの胎盤があれば、一人ずつ、分娩可能とのことです。なかには一人目のあとに、なかなか出てこない場合もありますが、胎児モニターで安全が確認され母体健全であれば、二人目も経膣分娩可能と言われています。

 論文はヒヤリングだけでは専門外の話題で、間違えたら嫌なので本稿をみました。双子妊娠1393人の二重盲検で、最初から帝王切開、最初から自然分娩の予定としました。羊膜二つ胎盤二つが70%、羊膜1つ胎盤2つがほぼ残りで、羊膜胎盤一つのものはほとんどありませんでした。最初から帝王切開組は90%そのようになりましたが、手術室まで待てないで自然分娩に残りはなったようです。経膣予定も自然分娩は60%で残りは、帝王切開併用となったようです。帝切予定組の中では残念ながら24名の新生児死亡、自然分娩予定組では17名で有意差はありませんでした。アメリカでは母体救済が第一条件と ERという医学ドラマで、聞いたことがあるのですが、母体死亡は一人ずつでした。出血合併症は帝王切開組と自然分娩とで有意差はありませんでした。アメリカの周産期統計は世界に誇れるものではなくて、日本の何倍も、新生児死亡、妊産婦死亡リスクがあります。ちなみに、日本は世界一の周産期統計保っています。日本の妊産婦死亡は10万人で3.5人、新生児死亡は1000人で0.9人ということです。また多胎妊娠の新生児死亡は単胎の10倍という日本の統計あります。上のアメリカ1300人で20名の新生児死亡ですが、日本では10名前後ということになるのでしょうか。少子高齢、晩婚化、妊活推奨などで高齢多胎妊娠が増えてきます。多胎妊娠は、リスクは上がる、自然分娩もできる、すぐに帝切できることが条件、できればNICUのあるところで出産をということを学びました。