頑張れアスピリン

Should Aspirin Be Used for Primary Prevention in the Post-Statin Era?

ニューイングランド 2018年10月18日

オーストラリアからの健常高齢者への予防アスピリンに対する懐疑的論文について、米国の高名な先生が解説。豪州からの3つの論文は、以前からの研究成果とはいささか変だ ODD といいつつも、スタチンの時代に、元気な高齢者には不要かもしれないという結論。

オーストラリアから9600人の4年研究で、アスピリンの心血管一次予防の効能についての論文が機関銃のように連発。結果は今までよく言われてきた、アスピリンで全死亡率を少し下げるとか、心血管病を予防するとか、大腸がんを少し予防するかもとかいう、過去の伝説を否定するものでした。最近も、アスピリンと糖尿病ではその使用を肯定する研究が出ております。Effects of aspirin for primary prevention in persons with diabetes mellitus. ASCEND研究の一環、2018年9月から10月にかけてJAMAやランセットにおいて、糖尿病でのアスピリンの効用に疑いの余地はありません。

Oddな豪州からの論文群は、オーストラリア老人中心でほんの少しアメリカ老人(黒人やスペイン系も入れて)をサンプルに入れている研究です。アスピリン使用にて、オーストラリア人では全死亡率が上がって、アメリカ人は人種にかかわらず全死亡率が下がるという、特異なデータでした。心血管病も予防不十分で、出血だけが怖かったというような、豪州データでした。さすが、ボストンの世界的名医は豪州論文の盲点をつきました。豪州老人スタディは4年の観察に過ぎないこと、スタチン使用率がほかのスタディーでは75%であったりするのに豪州データでは34%に過ぎないことを上げていました。高脂血症治療薬を使いつつですと、アスピリンの本来の一次止血制御が心筋梗塞や脳梗塞の予防効果が高まるとしてよいのではないか、ということでした。

 私はアスピリン大好き人間ですが、さすがに脳血管疾患の既往もなく、糖尿病もない人に投与することはこの10年ではやめています。スタチン製剤が飲めない高脂血症患者さん、家族に脳血管疾患既往があって心配な人、静脈瘤含めてDダイマーが有意に陽性な人、血栓性静脈炎の既往のある人、に対しては、これ幸いとばかりに投与して、心血管事故を防いでいます。しかし80歳以上になると、転んだら、大変な外傷に発展するために、二日に1回にしたり、十分説明の上中止したりしています。