薬疹

Exanthematous Drug Eruptions

2012年ニューイングランド

風邪薬のあとの皮疹の続きで、薬疹の総説を引っ張りました。まとめと作文です。

薬疹のまとめ。抗生剤、抗てんかん剤、尿酸の薬は千人初発投与したら、50人ぐらいは薬疹を認めます。その程度は様々です。よく日常臨床でACEやARB内服中で、軽い蕁麻疹を繰り返す際、投薬中止を皮膚科から宣告されることがあります。それがどういう意味か、勉強してみました。

薬疹の免疫機序は、T細胞に提示される、薬品から誘導されたタンパク質が抗原提示されて起こります。よくあるのは伝染性単核球症(EBV)による咽頭炎や頸部リンパ節腫脹に対して、やおらペニシリンを与えると、3日以内に5%の頻度で全身の薬疹がでます。この薬疹はEB感染が落ち着いても、一生にわたりペニシリンアレルギーとして残るようです。小さいころペニシリンアレルギーという人はこれでしょう。またHLA-A*3101をもつものは多型紅斑性薬疹をつくりやすいとして、ヨーロッパやアフリカ(ホッテントット)などで知られています。このHLAもつ人には、痛み止め出せません。

4日から21日後に出現するもので38.5度以下の発熱であれば、以下の軽めの薬疹です

  1. 麻疹型は頻度が高く熱は38.5度以下で、粘膜には発疹の爆発はないですが、水泡伴う赤い麻疹のような発疹が全身に広がります。現行の内服薬は一切中止すべきでしょう。
  2. 蕁麻疹がぼちぼちできるのが、先の降圧剤や痛み止めによるもののようです。薬をやめたらでなくなるし、また再開しても大丈夫なこともあるようです。使用不可と判断は早計。
  3. 手の甲にできるものは、利尿剤やニューキノロン系抗生剤やアミオダロン、紫外線が関係します。皮膚後遺症が激しいため、原因検索はとても大事です。湿布や熱さまシートで難治性の皮疹を、オデコや手首に湿布をした後などで手の甲に認めます。

 

唇や下肢に赤い痛い発赤が決まってできる症状は、痛み止めに特徴的です。

4日から21日後に出現するもので38.5度以上の怖い薬疹

  1. Drug rash with eosinophilia and systemic symptoms DRESS症候群(昨日のクリニカルケース)

下肢に多く高熱、好酸球増加で全身のリンパ節腫脹をともなう。

  1. Stevens-Johnson Syndrome and Toxic Epidermal Necrolysis (SJS-TEN)体幹からはじまりねんまくまでも壊死性皮膚炎が襲う、最重症型。

 

投薬してすぐの蕁麻疹は、アナフィラキシーであって、こちらのほうが頻度は低いようですが、即時的に反応しているので要注意です。即刻中止のうえ、医療機関で蕁麻疹治療を開始すべきです。

薬疹は、飲んですぐに薬疹としての蕁麻疹が出るわけではなく、数日後に全身に蕁麻疹がでるところからスタートします。すぐに薬を中止するほうが、無難なようで、皮膚科の先生の判断も、おそらくDRESSやTENを経験しているからでしょう。よく相談して、違う種類の薬に変えるようにしたいです。