新旧の尿酸の薬トピック

12月は例のaltmetrics2018など、各種のジャーナルの年間ランキングが目白押しですので、それらの解釈に没頭したいです。この1年間で勉強したことが多岐に及びすぎていまして、整理整頓もかねて、まとめと確認を年末までにいくつか投稿公開予定です。来年度1月からは、同じように週3回投稿公開します。

Cardiovascular Safety of Febuxostat or Allopurinol in Patients with Gout

NEJM 2018年 3月29日

高尿酸血症治療で効果のある、最近登場の薬と古くからある薬との比較が出ました。

エンドポイント(心血管死,非致死的心筋梗塞,非致死的脳卒中,緊急血行再建を施行した不安定狭心症の複合)のハザード比 1.3 とのことでした。平均年齢65歳で6年間で3000人新薬で243人死亡、旧薬3000人で199人が死亡という結果でした。これでは一方的に期待の新薬に分が悪かったことになります。キサンチンオキシダーゼを選択的に阻害して、尿酸を下げる良薬ですのに。古くからの薬は核酸の形をもって競合阻害と他の核酸代謝酵素も阻害する可能性があるようです。問題点は一万人からの高尿酸と痛風の患者を集めて、半数近くが脱落している研究であることがあげられます。読者投稿コーナーCorrespondenceも読んでみて自分も考えてみました。新薬群は尿酸値の低下が旧薬群より高度であることが関与してませんでしょうか。無理やり尿酸を下げるとよくないという論文もありました。Sex-specific relationship of serum uric acid with all-cause mortality in adults with normal kidney function: an observational study. J Rheumatol 2017;44:380-387. 韓国の剖検から尿酸と死亡率はU字状であった。

またキサンチンオキシダーゼそのものがNOを発生させるようで、心血管に保護的効果もあるという論文もありました。Reduction of nitrite to nitric oxide during ischemia protects against myocardial ischemia-reperfusion damage. Proc Natl Acad Sci U S A 2004;101:13683-13688.

血圧も血糖もある程度lower the better の概念がありますが、極端な低値は、必ずJなりUのパラドクスを生むことになります。この論文のプロトコールは外人さんで肥満度33のような人ですので妥当かもしれませんが、新薬は日本人の4倍量からスタート、旧薬は3倍量からのスタートとなっています。私から見ても新薬はスタート量があまりに猛ダッシュで尿酸低下作用が、強すぎたのかもしれません。低くなりすぎたから体に悪いと思ってトライアルをやめた患者さんが多いのじゃないでしょうか。6年たったら心血管死亡者が有意に多かった結果になったのでしょう。日本の会社が作り、日本の会社が米国で売っている薬ですので、応援しています。自分もよく使用している薬ですので、今後は尿酸値を見ながら、低すぎる人は、二日に1回とか、毎宴会翌日投与とか、臨機応変に対応します。