抗生剤で動脈瘤?

Fluoroquinolone use and risk of aortic aneurysm and dissection: nationwide cohort study.

英国医師会雑誌2018年1月号

スウェーデンでの研究で、健康保険データからニューキノロン系抗生剤使用36万人ペニシリン使用36万人を追跡しました。コンピューターが追跡しただけで、最初から結論のニューキノロン系使用では動脈瘤や大動脈解離のリスクが上がると予想したわけではなく、結果が出ちゃったという報告です。アルメトリックスコアーが800越えですから、大ヒット医学論文になってしまいました。36万人ずつの2群間では追跡前に大きな差がなかったのですが。服用後60日の追跡で、ニューキノロンで0.0178%に大動脈病発生、ペニシリンで0.0111%で発生、割ると1.6倍も多かった(最近はP値は関係ないのか記載もありません)、こりゃ大変だぞーという論文です。相対危険率60%といっても、危険率は0.0067%増加するということです。統計学者としては言いがかりではないと言うでしょうが、こういう数字のマジックは言いがかりともとらえられます。確かに、ニューキノロンの高齢者使用で、アキレス腱断裂が知られていますので、注意は要するのでしょうか。ニューキノロン系抗生剤での結合組織障害の論文を探しました。Fluoroquinolone-Associated Tendinopathy: Does Levofloxacin Pose the Greatest Risk? 薬理学雑誌2016年です。この中では、高齢、ステロイド使用、透析、移植後の患者でのアキレス腱断裂に注意とのことになっています。また試験管論文ではCiprofloxacin up-regulates tendon cells to express matrix metalloproteinase-2 with degradation of type I collagen.整形外科研究2011年にでており、創傷治癒因子の障害とコラーゲン代謝障害がニューキノロン投与で実験的に誘発されることを証明していました。試験管研究で証明されても、72万人の人体研究では絶対的な危険性はないということになります。数字のトリックを理解しないで、報道されると、大変な動揺を臨床の世界にもたらしますので、注意を要します。