延命と医療➃在宅にて

①±胃ろう、②±中心静脈、 ③±気管切開±人工呼吸±酸素投与などで

延命を数年確保できる、在宅医療技術が確立されていることは今まで述べました。

①~③をせずに、自宅で枯れるように亡くなりたいと言われる方がいます。その場合、家族は枕頭にすわって、毎時間のように、吸いさしで水分や重湯をあたえないと、3日で飢えます。数時間おきに体位変換をしないと、褥瘡がすぐにできて、痛みながら枯れてゆきます。痰の絡む人には、一日何回も鼻腔や口腔出血に注意して、サクションで吸引しないと、窒息のおそれがあります。家族の手間があればあるほど、枯れる時間が長くなります。本人の意志なり家族の意向で、①から③を拒否しても、生理的欲求はコントロールできません。口の中に、もっと違った味のジュースを入れてもらいたいかもしれません。痰が絡んで息が苦しいよーと、苦悶しているかもしれません。背中に物が挟まっていたいから、誰か取ってくれと、希望しているかもしれません。家族と患者との密接な関係性、介護者としての想像力と機転、絶え間ない愛情によって、本人の望む枯れるような尊厳死となればよいですが、単純な外因性の飢餓や窒息と言われる状態も作れてしまします。日中家族が不在になるお宅は、在宅による尊厳死はできません。

家族は連日の枕頭待機で、疲弊してゆきます。奥さんと娘数人の強靭な体制での、ローテーションでも数か月すると、一抜け二抜けがでて、ただ一人が黙々と頑張ることもあります。伴侶や娘さんが最後の介護者になることが多いです。子育て含めて人のお世話の経験のある人は、すぐに枕頭での、自分の仕事を把握し、誰よりも上手になってゆきます。そして、苦しそうな様子を、肌身で感じて、精神的にも参ってきます。やはり点滴を定期的にしてもらいたい、在宅酸素で呼吸の苦悶が防げないかという、①から③の意味合いがようやくわかることもあります。そこから、また主治医と相談して、なんらかの、オプション設置を考えるのも、大切なことです。

往診医師は、床ずれの有無を確かめたり、体の疲弊具合を、理学所見だけで判断します。脱水が高度になれば時々末梢点滴を施すことや、滞在のわずかな時間に、アドバイスやねぎらいのことばなどをかけてゆきます。採血やエコーなどを駆使すれば、余命の判断も可能でしょうが、そのあたりは、医師と家族との阿吽が必要です。死期の判断も、聴診器とペンライトだけでするのか?救急隊では、心電図モニターフラットを確認して心肺停止の判断基準にしています。心臓を専門にしてきた私ならば、小型モニターを枕頭において、体に3つ小さいパッドをはって、心電図フラットを記録して、最終診断をしたいところです。訪問看護を週何回かは頼むことはできます。訪問看護では、一日一回1時間程度は家族の代わりができるし、上手に痰の吸引や末梢点滴管理などをしてもらえるでしょう。医療保険での訪問看護は、原則癌や難病末期の指定が必要なので、老衰による枯れるような在宅死には適応されない場合が多いです。おそらく毎日ナースに来てもらおうとしたら、別途料金が発生します。ヘルパーさんは枕元の清掃ぐらい、褥瘡防止の体位変換やおむつ交換も家族と共同が望ましく、枕頭待機の代替にはなりません。枯れるような尊厳死には、必ず枕頭待機できる家族が必要です。続く 次回は療養施設での尊厳死について