延命と医療①栄養

在宅医療、療養施設、有料老人ホーム、尊厳の保たれた医療、リビングウイル、エウタナシア(安楽)など終末期医療で大事なキーワードです。高齢の方は、ピンころが一番、そうでなければ余分な延命手段はとりたくない、とよくおっしゃいます。延命に必要な、アイテムについて、その概略を何回かに分けて、概説します。

最近胃ろう増設による延命を忌避する風潮が、超高齢者、癌末期、難病、の患者さんや、その家族でみられます。胃ろうは万全かというと、若い世代では、胃の運動も良好でカテーテル交換もしっかりすれば、10年と持つ可能性もあるでしょう。しかし、体動による抜去、腸閉塞、下痢などで永久に胃ろうが持つとは限りません。食道逆流にて、誤嚥、窒息がおこることもあります。ただし、腸管を使う栄養は、人間の生理にかなっています。必要なだけ吸収できるし、腸内細菌の逆襲も防げて、胆汁と腸管との循環もあって絶食による胆道感染などはありません。注入する栄養剤も研究されつくされ、腎不全、肝不全用のものがあります。基本的には糖質主体で糖質制限は元気な人限定の特殊ダイエットです。人間の、弱った時に利用できる栄養の金看板はブドウ糖です。糖尿病の人の血糖管理はむつかしく、インスリン併用になります。

手足や肘の静脈からの点滴を末梢点滴と言いますが、手足の細い静脈からの栄養は濃度の薄いものしか行けません。10%のブドウ糖液で血管痛や血管炎がおこります。長持ちしません。1000カロリー投与しようとしたら、250gのブドウ糖、2500ccを補液する計算になります。一般に高齢者に2.5リットル毎日点滴すると、おそらく7日間のうちに胸水がたまる状態になります。太い静脈なら、少量で高濃度注入可能で、栄養管理は安全で長期に対応できるようになります。中心静脈栄養といって、末梢から行きにくい脂溶性ビタミンや微量元素をカクテルして理論上何千カロリーでも心不全や肝障害をフォローしながら長期に延命点滴できます。心肺損傷の危険を冒して、心臓に近い太い静脈に太い針で穿刺してルートを確保します。皮膚から飛び出している一時的なカテーテルに注入したり、カテーテルとポートと呼ばれる注入プラグを皮下に植え込んで恒久的なものに注入したりします。この手術は出張手術で多く経験させていただいており、少し得意としております。ポートを埋設すると、家族でも簡単に穿刺できますし、針を抜いてお風呂でくまなく体を洗えますし、皮膚を通してのカテーテル敗血症も防げます。 在宅医療で2年程度、無事故で、在宅養生したご老人を経験しています。続く