先週のNEJMより弁置換

Mechanical or Biologic Prostheses for Aortic-Valve and Mitral-Valve Replacement

NEJM 先週号

弁置換の話です。昔は扁桃腺炎後のリウマチ熱で大動脈弁や僧帽弁の狭窄症が多かったのですが、現在はリウマチ熱が日本で例えると数例年間とのことで、心臓弁手術にいたる病気は、先天的な形状変化(金八先生やシュワちゃん)、パーツとしての弁組織の脆弱性、老化現象による動脈硬化による大動脈弁石灰化、高血圧からくる大動脈弁や僧帽弁変化というような病態に変わります。人工弁は古くからラムネのボールのような簡単な構造で意外に長期安全が証明されていました。現在はドライバーのヘッドに使うような構造の人工ダイヤでできた、蝶番構造の人工弁です。手術は心臓を止めて、人工心肺を使います。大動脈弁や僧帽弁を取り去って、残りの組織に、強めの溶けない糸で(刑事コロンボにありましたね)例えば、14本28回縫って、人工ダイヤ構造に組み込まれた人工血管のような縫い代の布?に針を通して、パラシュートみたいに糸たちをさばいて、弁置換縫い付け手術となります。複雑なボタン付けです。人工ダイヤは機械弁ともよばれ、一生ワーファリン内服で血液を超サラサラにして何十年という生活を期待します。納豆を2日食べると、血栓弁で危ないのです。妊娠希望の若い女性、アクションスターのシュワちゃん(金八先生は機械弁ですが)、サラサラの薬が飲めない人は豚か人か牛の弁を抗原除去して針金細工した製品で同様の手術をします。これはそんなにサラサラ必須ではないです、しかし本文中もありましたが早い人で6年ぐらいから生体弁は劣化します、とくにいつも心室の高圧に耐え忍ぶ僧帽弁は劣化激しいのです。

スタンフォードの心臓外科の先生が自分たちの患者さんたちの17年間の集計をしました。大動脈機械弁6000人vs大動脈生体弁3800, 僧帽弁機械弁10000 vs 僧帽弁生体弁5500の検討です。結論は簡単で大動脈弁に関しては55歳までは機械弁の方が死亡率少ない。僧帽弁は70歳までは機械弁の方に死亡率が少ないというものでした。生体弁は再手術ありきということで、大動脈弁の再手術は体表に近いだけに癒着心臓を丹念にねちねち、安全にほじくればなんとかなりそうですが。僧帽弁位は体の奥深くで、手術の都合上大動脈も完全にほじくらなければならないから、再手術死亡率考えたら70歳までは僧帽弁は機械弁が安全だということでしょうか。安易な若年者への生体弁僧帽弁置換はよくなさそうと先生(金八でなくスタンフォードの先生)がコメントしていました。その他表中に統計的有意差あったのは、入れやすい大動脈弁逆流には生体弁が多く入れられ、脳卒中既往大動脈弁位には機械弁でしっかり抗凝固、腎不全のものには血液サラサラ怖いから生体弁、骨粗しょう症のものや認知症にはワーファリンが骨粗しょう症に悪く薬の内服耐用悪いため生体弁が選択されていました。私の叔母は2弁とも機械弁で30年間生存しました、ワーファリンがほんの少しで効く体質が作用したのと、薬の管理が晩年まで丁寧でした。自己弁での形成術やカテーテル治療など選択肢は広がっていますが、失敗して弁置換に変更するリスクをどう考えるのかが、命題です。基本は機械弁でワーファリンしっかりというところでしょう。