ランセットの〆

Small bites versus large bites for closure of abdominal midline incisions (STITCH): a double-blind, multicenter randomized controlled trial. ランセット 2015年 6/16

開腹手術、正中切開での腹の〆方論文です。肥満の人に多いですが、手術後何年かすると切開縫合が弱くなって穴が開いて、脱腸になることがあるのを何とか防ぐ方法がないかという論文です。腹壁瘢痕ヘルニアといいまして、嵌頓など重篤になるケースはあまりないように思いますから過剰に心配しないでくださいね。腹筋が割れているのに憧れますが、正中には左右筋膜が融合した一本の白線があります。胸骨から恥骨まで事実上つながる筋膜の集まった解剖学的一路です。閉腹の時に、これらを合わせて、〆ます。15-20何回別個に縫い結び縫い結びする方法を結節縫合、連続して祭り縫いするのを連続縫合と言います。20年前からは一本の太いループで連続縫合するほうが良いというのはありました。そのループの縫合を5mm間隔でいくか1㎝間隔で行くかという研究です。論文のように1年ぐらいで10%以上脱腸になる患者さんは日本には少ないですが(日本の患者さんが痩せているのと日本の外科医は少し手先が器用)、5mm間隔がよいという結果でしたが、僅差でした。連続縫合の後のヘルニアの穴の大きさは筋膜が連続性に断裂して大穴が開かなければいいなと祈っています。名医が縫うのと、研修医が縫うのとではおなじ一針でもことなります。それを統一するように努力したからランセット掲載になったのでしょう。自分の患者さんでも10年以上たって、腹壁を触ってみると、なっている人が実際におられ、注意指導しております。今も少し外科をさせてもらっていますが、一針入魂を肝に銘じます。