ポストコロナーフルフェイスマスク

コロナ診療では、電動送気式のフルフェイスの防塵マスクは、かなり医療現場を助けると思う。
マスクの装着をして外科医と称して29年になるが、コロナがなかったら、これほどマスクについて考えることはない。手術のマスクは患者に自分の息を掛けないだけのことである。感染を患者さんから貰うことを想定していない。自分は、拡大鏡や老眼鏡をかけて手術をするので、普通にマスクをすると、グラスが曇る。手術の際は、これに対してマスク上縁に強力なテープで皮膚とに隙間がないようにしていた。手術後テープを剥がすと痛々しいが皮膚も剥げることがあった。これが実は、問題なのだ。マスクの上縁にある針金を利用して鼻翼を摘むようにすれば、曇りにくいことを、恥ずかしいが最近発見した。マスクをして眼鏡が曇るのは、鼻根から額にかけて自分の息が不織布フィルターを介さずに出ていることになる。曇り止め製剤を安易に使っていたら、自分の息を手術中に出していたことになる。逆に言うと、外気をこのルートで吸うことになる。
コロナ診療ではゴーグルとN95マスクを使用する。高機能マスクでは空気漏テストを必ずする。この際に手で漏れを確かめるようであるが、伊達眼鏡をかけて曇らないことを確認しようと思う。顔を歌舞伎の連獅子のように動かして、漏れないことも、コロナ飛沫を喰らわないための確認手段にする。ゴーグルは必ずマスクや顔の間に微妙に隙間が出るので目の完全防護は金輪際無理だと思うが、鼻息からの曇りは守られる。それでもゴーグルは曇ることに気づいた。目も水分を蒸発しているからである。これには曇り止めを使用している。診察する陰圧の効いた特製ブースで疑い患者を診ているが、10分ぐらいの対面診療であるが、鼻翼を抑えた留め金が採血や聴診の際にずれていくような気がすると感染の恐怖がよぎる、ゴーグル内が微妙に目からの蒸発で曇ってくるとまさに五里霧中の感じがしてくる。本物のコロナファイターたち。集中治療室で数時間東奔西走する医師看護師は、高性能マスクで息苦しいだろうし、動き回ってマスクがずれたりしないか、ゴーグルが曇って、処置がしにくくてゴーグルを触ったりしないか、感染防御の技術はこういうところが肝心なのかと愚考している。50歳以上のスタッフが長時間、患者の呼吸器や人工心肺や感染病態の管理をすると、いつか必ず感染して御身自ら重症例になるやもしれぬ。
 アスベストを扱うことのできる、防塵業者は電動フルフェイスマスクを使って、高級タイベックスーツを着ている。入室前は専用の精密テスターで息漏れが無いかの確認義務が行政指導されている。客観的に記録し行政に報告して自分の命を守って、養生密閉の高性能陰圧室で汗だくの作業をして生計を立てている。ウイルスより小さい粉塵を一つでもインナーにつけて家に帰らない掟が法令に定められて、違反時の罰則が明記されている。退室手順、防護服の脱着手順など感染防御より機械化され複雑徹底することが義務付けられ、ようやく国から施行認可を受けている。ウイルスより小さいものを通さないフィルターということで自分も防塵マスクの装着を練習している。経産相や厚労省が防塵マスクの方がコロナ対策マスクになると認め始めたら、実際に使用したい。エアロゾルは絶対に吸うことがなく、全くゴーグルが曇らないし、吸気連動センサーで自動送気されて息苦しくないし、5か所の留め金でずれないし、ずれたらセンサーで換気量が増量されて、外気が絶対に入らないようになっている。長時間の過酷な医療労働の軽減にならないか、院内感染防止にならないかと、思っているのですが。東京はあと1か月乗り切ったら、少し楽になるのですが。厚労省と経産省と国土交通省が備品の調整などを話し合いしていればいいのですが。先の震災時の除染作業のタイベックスーツが何十万着どっかに保管されていたり、防塵マスクや防毒マスクが何万個と保管されているかどうか、必ず明日でいいですから担当の人は確認作業を初めてもらいたいです。人命にかかわることですので。