ポストコロナ―微小血栓

厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部の3月17日の手引きの中に、重症化を有意に示唆できる判定基準に、リンパ球数低下とともにD-ダイマー上昇があるではないか。血栓は別名フィブリンであって、これの分解産物で二つの分子構造からその名がつけられた、血栓マーカーである。もっとも、中国のたった47人の症例検討を採用しているのが、弱い。

前にも述べたが、集中治療の経験のある医師で、死亡診断書にウイルス性肺炎という病名を書いた経験はほとんどないことと思われる。先のSARSではその経験のある医師もいたとおもわれるが、おたふくかぜ、はしか、水疱瘡、がいくら重症化しても、ウイルス性肺炎にはならない。エイズ患者でもカビの肺炎にも、サイトメガロウイルス腸炎の血便になっても、ウイルス性肺炎という病像はめずらしい。むしろウイルスといえば、髄膜炎に行きそうである。ほんとうに肺炎だけなのか?免疫低下傾向の有名人が、肺気腫の有名人が、高血圧の人が、肥満体の人が、カラオケで叫んでいた人が、喫煙の履歴の人々。元気であったのに、たちどころに、悪くなったという。細菌性肺炎で人工呼吸器装着はあるであろうが、ECMOまわして助かるというのも、若い人に限り早期に導入して、抗生剤が奏功して数日で離脱できる場合だけであろう。基本的に感染症のある人の人工心肺は、全身に感染症が巡ることが予想されて、堅い話、相対的禁忌となる。ECMOを15年前まで開心術後のひどい患者に回したが、nightmareばかり思い出す。しかし、新型コロナ肺炎では確かに、救命できているようである。

結論は、たちどころに悪くなる奇病ともいえる病態、血液超サラサラにして回すECMOで救命の可能性、フサンという血液サラサラする膵炎治療の薬が効く、などから血栓もこのウイルスの毒性の一つなのではないか。エボラでは出血毒があるので、肺炎になってもECMOをまわすのは禁忌である。この新型コロナウイルス肺炎の病態の一つに、過凝固、血栓形成などのメカニズムがあるかもしれない。いつものように肺動脈にごつんと血栓が嵌頓するのではなく、末梢レベルでの、気管支動脈や末梢の肺動静脈での急速な微小血栓という意味である。電話会議でもズームでも使って、集中治療の専門家、血液の専門家、呼吸器の専門家に加えて、循環器や胸部心臓血管外科も加えて、肺の微小血栓について調べてもらいたい。カロナールが消炎剤の安全牌として世界的に多用されているが、もしかしたらこの新型コロナには昔のサリチル酸がいいことをしたりするかもしれない。微小血栓予防になるからである。抗血小板作用とVIII因子を弱く抑制する。血液脳関門を通らないとかで、髄膜炎を好発するウイルス疾患には不向きであろう。PL顆粒とかが地味に悪化予防になったりするかもしれないので、疑い患者で内服既往があれば投与を試みる。尚当院では、リンパ球数も血栓マーカーも15分以内に定量できる。