クリニカルケースes

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2018年8月16日

63歳男性で繰り返す失神。13年前に冠動脈バイパス術後。内胸動脈、橈骨動脈で左心室の冠動脈バイパス。右冠動脈は、静脈瘤のあった静脈でのバイパスをしたようです。

心エコーで心臓表面の動脈瘤がありました。血栓がどっかに飛んで、失神なのか、他の原因での失神なのか。ハーバードの先生は迷いました。現場を知る者としては、静脈瘤の傾向のある静脈でも、手術中にもう一回いい静脈を探して、さらに静脈瘤があったら大変ですから、無理して使うこともあろうと思います。これが瘤化しているのが、たまたま見つかったようです。川崎病成人期にあるような、冠動脈瘤が右心室と交通していたら、心房中隔経由の塞栓による失神として面白いのでしょうが、

結局手術をして瘤をとってみたようですが全く右心室と瘻孔を形成していませんでした。失神の原因は結局よく判らず、アル中気味のおじさんの酒の飲みすぎとしていました。失神の原因を、アルコールや代謝や低酸素や心血管由来に求め、全身を見なさいという啓蒙的な症例報告でした。日本ではバイパス術後13年生きるのは当たり前です。国民皆保険で永久的に抗血小板剤投与と外来診察がしっかり行われています。下肢静脈グラフトの瘤化がある患者さんが、気を失うまで酒をのむことを、ほとんどの日本人医師ははきつくたしなめることでしょう。