クリニカルケースes

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2018年10月18日

36歳アジア女性大学教授の妊娠後期に発見の末期S状結腸がん

アジア人が対象の症例報告で、日本人にも関係があるので読んでみました。子供を帝王切開で出産したあと、患者さんは弱って、化学療法も拒否をして、子供を一度見ただけで、家族に見守られて永眠されたようです。この中で、大腸がんの世代的変化、病理所見と化学療法について、著者のコメントを勉強してみました。

1950年代に生まれた世代より、1990年台に生まれたものは、2倍の確率で左側結腸癌が多いという論文がいくつもあるようです。左側結腸癌の10%には直腸がんの20%近くに20歳から49歳の年代が含まれるようです。家族性のリンチ症候群や多発ポリープの集団はもちろんですが、家族に大腸がんのいる若年者はさらに2倍の計4倍の左側大腸がんリスクがあるとハーバードの先生は言ってました。この女性の組織型は腺癌でしたが、ハーバードではFOLFOX (fluorouracil, leucovorin [folinic acid], and oxaliplatin) 代謝拮抗剤と白金製剤療法で日本でも広く行われている治療が、腫瘍専門医から提案されていました。

さらにこの患者さんは、MLH1, MSH2, MSH6, and PMS2というミスマッチ修復系の蛋白が認められて、リンチ症候群とは断言していませんが、可能性がありました。Panels of Immunohistochemical Markers Help Determine Primary Sites of Metastatic Adenocarcinoma に簡易表もありましたが、腺癌といってもまた、様々な免疫マーカーがあって、血液検査でどこの腺癌が疑われるかなどもわかるようです。大腸検査の前に、血液だけで、ある程度の原発巣の絞り込みができたようです。この患者さんはHER2陽性が免疫組織学法で認められ、チロシンキナーゼ阻害剤も使用可能でした。ハーバードの先生たちも、出産後頑張って化学療法を行うと、初回なので相当効果があると説得しましたが、拒絶されたようで、文面からも残念そうでした。