オズボーン波(J点)

Sudden Cardiac Arrest Associated with Early Repolarization ニューイングランド2008年にフィンランドの先生が、心室不整脈の失神既往の人の心電図を解析しました。すると失神既往の若者の、右心室から心臓の裏手あたりを反映する心電図検査で曰く付きのサインを発見しました。

心電図は右の背中から左のわき腹に向けての、心臓の電気ベクトルです。内向整流chといいつつもカリウム(細胞内にたっぷりありすぎ)を外に少し漏らしながら静止膜電位形成、心房洞結節からの伝導系の刺激で閾値を超えると、ナトリウムがつられて急速流入オーバーチャージでカルシウムもつられて細胞内流入して心筋収縮(QRSからST)、遅延性のカリウム放出にて再分極(T波)、その後また同じサイクル、という, 心電図のもとになる電位勾配を生みます。心臓の筋肉量や長さや鮮度や深度などで変化していきます。左右上下左右斜めからみて心電図ベクトルを分配し平面図で表現するのが心電図です。左心室を6か所からじろじろみてベクトルを分配して、心筋梗塞や心肥大の診断に使います。筋肉の薄い心房は小さい山P、心室は大きな山をうって(QRS)1拍ごとに疲れますから、休む時にもカリウムを放出する際の電気信号をだします(T)。不吉なサインは心室が大きく収縮した山のQRS直後に普通ではない電位が発生します。これはJ点(オズボーン波と昔は言っていました)の上昇と言われています。フィンランドからの報告では、心室不整脈失神のない人にはこの異常波は見出すことは少ない(それでも5%は正常人でもあり)のですが、失神既往のある人は30%にこの不吉なサインがあるようです。このサインのある人は倍の確率で失神を繰り返すということです。日本のガイドラインでも、早期再分極という位置づけで、若年男性中心で、下壁誘導で大きくJ点アップするものは、男性に多いと推定され失神既往や家族歴を詳細に調査するようにという記載があります。J点大きくアップさらに長く形が歪になるのは要注意とされます。家系にぽっくり病、失神の既往がいる人は要注意です。遺伝形質もさることながら、初代発症の人も多く、J点はその日暮らしで大きくなったり小さくなったり、移動もします。会社検診でも、隔年で異常を指摘されたりすることもあります。J点かどうかはコンピューター解析だけでははっきりしないことが多いです。いつも日常臨床で、心電図解読の際に胃が痛くなる瞬間です。